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原案 君子蘭 より

 

この度、「はねっかえり」で、原案を担当することになった。

 

思えば8年前、当時「ミュージシャン」だった私は、

ある台本との出会いによって役者の道に入った。

 

そこから遡ること14年前、大学入学当時、

それまで人前で歌ったことなど一度も無いのに、

唐突に「軽音楽部」を訪れ、「ボーカリスト」として入部を希望した。

私はいつもこんな調子で人生を選択して行く。

 

私をよく知る友人は皆、今回東京に行った事も、

芝居の原案を描いても決して驚いたりはしない。

 

「また、何か新しいことを始めたな」と喜びはしてくれるけれども。

 

さて、今回、この作品を作ろうと思ったきっかけは・・・・・特に無い。

唐突に「思いついた」のだ。

「母と子」を題材にしたものがやりたいなって。

 

私自身、母親とは21歳の時に死別し、二人の子どもとも現在離れて暮らしている。

その、「身を切り刻まれる様な」痛みは、経験者で無ければ決して分からない。

だからこそ、誰かの作品をやるのではなく、自分で創作したいと思ったのかもしれない。

 

昨今のわが国の、子ども達を取り巻く状況の悪化は誰しも目を覆いたくなる。

その現象をただ、「犯人を極刑に処す」ことや「校門に鍵をかける」ことや

「加害者の子どもをカウンセリング」することで無くせるとは決して思わない。

 

そもそも、児童・青少年演劇とは、

「憂うべき社会的状況から子ども達を救うために生まれた」と聞いたことがある。

 

当時の「憂い」は戦争や終戦後の貧困であったが。

昨今の「憂い」の方が、ある意味「性質が悪い」気がする。

戦争を経験していない若造が何を言うかとお叱りを受けるのを承知で言うと。

 

芸術が「渇望」された時代ではなく、「飽和」している時代だからこそ

我々がやらなければならない課題が見えてきた。

 

だから、始めます。

チェスナッツを。

 

あなたの町の子ども達が目を輝かせてくれます様に。

 

心をこめて作ります。

                                  

                                    2005年 2月

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